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 佐藤賢一『小説フランス革命 1 革命のライオン』を読む。
 フランス革命というとルイ十六世の処刑とロベスピエールの粛清ぐらいしか知らなかったが、調べてみるとそう簡単なものでもないようだ。まず、ロベスピエールは初めは理想に燃えながらも経験不足の若い議員であり、ルイ十六世にも平民を助けてくれるよう期待していた。そして何より、初期のフランス革命の中心人物はロベスピエールではなく、ミラボー伯爵という人物だった。
 ミラボーは貴族でありながら、平民の議会の代表となった人物で、平民たちの意見を代弁できる発言力と存在感をもつ平民の希望の星とされていた。その外見は容貌魁偉で、幼い頃は冷酷な父親に化物呼ばわりされていた。この父親は公には進歩的で理解力のある人物を装いながらも家庭では暴君であり、ミラボーはこの父親を憎んでいた。そして父への復讐として、革命を成功させて見返してやろうと思っていたが、ことがなる前に父親は死去してしまい、自分の成功した姿を父親に見せ付けることはできなくなる。ミラボー自身もまた、革命初期に病気で急死し、死後にスキャンダルが暴露されてその権威を失うことになる。
 ミラボーは面白い人物だ。歴史的な業績は、たとえばナポレオンだとかルイ十四世だとか、そうした偉大な人物に比べれば小さいだろうし、僕もこの本で初めて知った。けれど、当時のフランスでは誰知らぬものとてない大物かつヒーローであり、そして大勢の女性にもてもてのプレイボーイでもあった。声も大きければ体格も立派で、知名度も高く、世慣れているミラボーを、若いロベスピエールは英雄視していた。しかし僕たちの知っている歴史では、その後革命を主導したのはロベスピエールであり、ミラボーを知っている人は多くはない。またこの小説を読んでみても、暴虐な父への憎しみにとらわれ続けていたり、思うように進まない革命に苛立つ中で病気が悪化したりと、初期の威勢のよさは長くは続かない。そして、結局歴史上の偉人としてはさほど有名ではない。少なくともロベスピエールの方が有名だろう。それを思うと、容貌魁偉で世慣れていて、寝室を訪れたロベスピエールの前で女性と同衾してる姿を見せ付けていた豪傑のミラボーに、不思議なはかなさと諸行無常を感じるものだ。「おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし」とは、実際よくいったものだと思う。
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テーマ : 歴史・時代小説 - ジャンル : 本・雑誌

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